ゴールデンウィークに海外へ渡航される皆様へ
(海外で注意すべき感染症について)
※ 本情報は、海外に渡航・滞在される方が自分自身の判断で安全を確保するための参考情報です。本情報が発出されていないからといって、安全が保証されるというものではありません。
※ 本情報は、法令上の強制力をもって、個人の渡航や旅行会社による主催旅行を禁止したり、退避を命令するものでもありません。
※ 海外では「自分の身は自分で守る」との心構えをもって、渡航・滞在の目的に合わせた情報収集や安全対策に努めてください。
ゴールデンウィークの期間には,多くの方が海外へ渡航されることと思い ますが,海外滞在中に感染症に感染することなく,安全で快適に旅行し,無 事に帰国するために,現在,海外で注意すべき感染症及びその予防対策につ いて,以下のとおりお知らせいたします。
感染症にかからないようにするためには,感染症に対する正しい知識と予 防方法を身につけることが重要です。基本的な感染症対策として,食べ物, 飲料水,虫刺され(蚊やダニなど),動物との接触には注意が必要です。 海外渡航を予定されている方は,出発前に旅行プランに合わせ,渡航先で の感染症の発生状況に関する最新の情報を入手し,適切な感染予防に心がけ てください。
また,日本の空港や港の検疫所では健康相談を行っています。帰国時に発 熱や下痢等,具合が悪い場合にはお気軽に検疫所係官にご相談ください。
感染症には潜伏期間(感染してから発症するまでの期間)が長いものもあ り(数日から1週間以上),帰国後しばらく経過してから具合が悪くなるこ とがあります。その際は早急に医療機関で受診し,渡航先,滞在期間,動物 との接触の有無などについて必ず申し出てください。
1.動物由来感染症
「動物由来感染症」とは動物から人に感染する病気の総称です。世界中 で数多くある動物由来感染症のすべてが日本に存在するわけではありませ ん。日本では動物由来感染症が比較的少ないですが,世界では多くの動物 由来感染症が発生していますので,むやみに野生動物や飼い主不詳の動物 に触れることは避けてください。
(1)鳥インフルエンザ(H5N1)
高病原性H5N1亜型インフルエンザウイルスを病原体とする鳥インフルエンザ(H5N1)は,東南アジアを中心に家きん(ニワトリ,アヒルなど)で発生しています。鳥インフルエンザは,感染した鳥の解体調理,飼育小屋などの閉鎖的な空間における感染した鳥との接触など,鳥の臓器,体液,糞などと濃厚に接触することによって人が感染することがあります。人が感染した場合には,重篤な症状となることが多く,世界保健機関(WHO)によると,2003年11月から2010年4月21日までに世界15か国で495人の発症者(うち死亡者292人)が報告されています。
生きた鳥が売られている市場や養鶏場にむやみに近寄らない。
手洗いうがいの励行(特に発生国・地域では徹底してください)。
厚生労働省「鳥インフルエンザに関する情報」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou02/index.html
厚生労働省検疫所「高病原性鳥インフルエンザ」
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/35_hpai.html
国立感染症研究所感染症情報センター「疾患別情報:鳥インフルエンザ」
http://idsc.nih.go.jp/disease/avian_influenza/index.html
(2)狂犬病
狂犬病は,狂犬病ウイルスによる感染症です。人は感染動物(アジアでは主として犬)に咬まれることよって唾液からウイルスに感染し,長い潜伏期の後に発症します。発症すると有効な治療法は無く,ほぼ100%死亡します。世界における死者数は毎年5万5千人といわれています。狂犬病ワクチン接種による発症予防が可能です。感染動物に咬まれたら,直ちに狂犬病ワクチンを接種することにより発症を防げます。
我が国では,2006年にフィリピンで犬に咬まれ帰国後に発症し,死亡した事例が2例報告されています。
感染が疑われた後,直ちに傷口を消毒し,速やかに暴露後ワクチン接種を開始することにより狂犬病の発症を防ぐことができます。万一,犬などの動物に咬まれた場合は,すぐに傷口を石けんと水でよく洗い,できるだけ早く現地の医療機関を受診し,傷口の消毒や必要に応じて狂犬病のワクチンの接種を受けましょう。
厚生労働省「狂犬病について」:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/index.html
(3) エボラ出血熱
主にアフリカで流行している急性熱性疾患の感染症であり,現在まで,アフリカ西部のコートジボワールとアフリカの中央部で発生しています。2000年から2001年にはウガンダで,2001年から2002年にはガボンとコンゴ共和国の国境地帯での流行が報告されており,毎年流行が発生しています。
(4) マールブルグ病
マールブルグ病はエボラ出血熱とともに,ウイルス性出血熱を特徴とする感染症であり,近年はケニア,ジンバブエ,コンゴ民主共和国,アンゴラなどで発生しています。オランダや米国では,ウガンダで洞窟に入り,帰国後にマールブルグ病を発症した事例も報告されています。大きな流行になる場合もありますので御注意ください。
厚生労働省「マールブルグ病に関する海外渡航者への注意喚起について」:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou25/index.html
2.蚊やダニなど節足動物が媒介する感染症
渡航先(国・地域)や渡航先での活動によって,感染する可能性のある感染症は大きく異なりますが,世界的に蚊が媒介する感染症が多く報告されています。特に熱帯・亜熱帯地域ではマラリア,デング熱,チクングニヤ熱などに注意が必要となります。
(1)マラリア
毎年世界中で約2億5000万人以上の患者,80万人以上の死亡者がいると報告されています。我が国では,海外で感染して帰国される方(輸入症例)が毎年数十人報告されています。
厚生労働省検疫所「マラリア」:
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/07_mala.html
国立感染症研究所感染症情報センター「疾患別情報:マラリア」:
http://idsc.nih.go.jp/disease/malaria/index.html
(2)デング熱,デング出血熱
世界中で25億人が感染するリスクがあり,毎年約5,000万人の患者が発生していると考えられています。
我が国では,海外で感染して帰国される方が毎年数100人報告されています。2010年に入ってからも,既に28人の患者が確認されており,インドネシアでの感染事例が増加傾向となっていますので注意が必要です。2010年,インドネシアのバリ島からの帰国者において,合計10人の感染が確認されています。
厚生労働省検疫所「デング熱」
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/09_dengu.html
国立感染症研究所感染症情報センター「疾患別情報:デング熱」
http://idsc.nih.go.jp/disease/dengue/index.html
国立感染症研究所「デングウイルス感染症情報」
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/dengue.htm
(3)チクングニヤ熱
アフリカ,東南アジア,南アジアの国々で流行しており,2006年にはインドで約140万人の感染者が報告されています。
我が国では,2009年,海外で感染して帰国後にチクングニヤ熱と診断された事例がインドネシアから5例,マレーシアから2例,インドから1例,タイから1例,ミャンマーから1例の合計10例が確認されています。
国立感染症研究所感染症情報センター「疾患別情報:チクングニヤ熱」:
http://idsc.nih.go.jp/disease/chikungunya/index.html
国立感染症研究所「チクングニヤウイルス感染症」:
http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/Aiphavirus/Chikungunyahtml.htm
(4)ウエストナイル熱・脳炎
ウエストナイルウイルスが原因の熱性感染症です。このウイルスは,鳥と蚊の間で維持されている感染症です。北米地域で毎年数千人の感染者が報告されています。感染者の一部は重症化し脳炎を起し,まれに死亡することもあります。
我が国では,米国滞在中に感染し帰国後にウエストナイル熱と診断された事例が2005年に1例報告されています。
厚生労働省「ウエストナイル熱について」:
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou08/index.html
厚生労働省検疫所「ウエストナイル熱」:
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/10_west.html
国立感染症研究所「ウエストナイルウイルス」
http://www.nih.go.jp/vir1/NVL/WNVhomepage/WN.html
(5)クリミア・コンゴ出血熱
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスが原因の熱性出血性感染症です。このウイルスは,ヒツジなどの家畜とダニの間で維持されています。中国西部,東南アジア(パキスタン),中央アジア,中東,東ヨーロッパ,アフリカにおいて流行しています。死亡率の高い感染症で,人はダニに咬まれたり,感染動物に接触して感染します。北半球では,4月から6月に流行します。特に,最近トルコでクリミア・コンゴ出血熱の報告が増加しています。
厚生労働省検疫所「クリミア・コンゴ出血熱」
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/13_crimean.html
国立感染症研究所感染症情報センター
http://idsc.nih.go.jp/idwr/kansen/k02_g2/k02_31/k02_31.html
(6)リフトバレー熱
リフトバレー熱ウイルスが原因の感染症で,蚊に刺されることにより,人及び家畜(ヒツジ,ヤギ,ウシ,ラクダなど)が感染します。人の場合は,蚊に刺されて感染することがほとんどですが,感染動物の血液等に触れることによっても感染することもあります。主にサハラ砂漠以南のアフリカの国々で流行しており,2010年に入ってからは,南アフリカ
共和国での流行も確認されています。
厚生労働省検疫所「リフトバレー熱」
http://www.forth.go.jp/archive/tourist/kansen/11_rift.html
国立感染症研究所感染症情報センター「IASR:リフトバレー熱」
http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/336/fr3361.html
3.食べ物,水を介した感染症
渡航先や渡航先での行動内容によって,かかる可能性のある感染症はさまざまですが,最も多いのは食べ物や水を介した消化器系の感染症です。
A型肝炎,コレラ,赤痢,腸チフスなどは,途上国など公衆衛生の整備などが不十分な地域で感染することが多い感染症です。生水,氷,サラダ,生鮮魚介類等の十分に加熱されていない物の飲食は避けましょう。
4.その他注意すべき感染症
上記のほかにも,動物,水,食べ物等を通じて感染する病気が多く存在します。詳細は厚生労働省ホームページを参照ください。
( http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/dl/100423-1e.pdf )
5.海外の感染症に関する情報の入手
海外の感染症に関する情報は,以下のサイトより入手することが可能です。出発前に渡航先の感染症の流行状況等に関する情報を入手することをお勧めいたします。また,日本の空港や港の検疫所においても,リーフレット等を用意し情報提供を行っていますので,ご活用ください。
厚生労働省(ゴールデンウィーク期間中における海外での感染症予防について)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou27/100423-1.html
厚生労働省検疫所(海外渡航者のための感染症情報)ホームページ
http://www.forth.go.jp/
国立感染症研究所感染症情報センター(感染症別の詳細情報)
http://idsc.nih.go.jp/disease.html
外務省海外安全ホームページ(感染症関連情報)
http://www.anzen.mofa.go.jp/
外務省ホームページ(世界の医療事情)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html
(問い合わせ先)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2850
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902
http://www.anzen.mofa.go.jp/i/ (携帯版)
(了)